■ 今では定番となったTCHコントロールによる顎関節症治療

 

 長い人生の間に、2人に1人が患うと言われている顎関節症


 本会が木野孔司元東京医科歯科大学准教授が率いる東京医科歯科大学病院顎関節治療部が行っていたTCHコントロールを用いた顎関節症治療法を広める活動を行ったことで、多くの開業歯科医がこの方法で施術出来るようになりました。それまでは、マウスピースを口腔内に装着して、顎関節に掛かる力を緩和する治療法が中心でした。

 顎関節症が特別な病気ではなく、生活習慣病として認識され、生活習慣の是正で日常生活に困らない程度に症状が改善することが認識された意義は大きいのではないでしょうか。このことを現実に出来たことは、本会の名誉です。

 まずは、本会設立時(2010年)の木野先生の言葉を紹介しておきます。 

 「東京医科歯科大学の顎関節治療部には、他で治療を受けたのによくならないという訴えをもった患者さんが多数おいでになります。 顎関節症の痛みや口が開かないという訴えをもって歯科を受診したところ、かみあわせの悪さが原因だと言われ、歯列矯正や多くの歯のかぶせものによる治療を受けたけれどよくならなかった、という経験をお話しになります。 そのような患者さんの多くが、この顎関節治療部で開発した治療方法を採用すると短期間で症状が改善します。顎関節症を改善するのに歯並びをきれいにする歯列矯正や、かぶせものでかみ合わせをあたらしく作り直す必要はありません。自分で行うトレーニングで痛みはなくなり、口も十分に開けられるようになります。

 歯を削ったり歯列矯正を行っても良くならなかった場合、元に戻すことはできません。元のかみ合わせを変えるということは非常に危険な治療なのです。世界的にもそのようにかみ合わせを変える治療は行ってはいけないと宣言されているのです。かみ合わせを治したいなら、それは顎関節症の症状がなくなってからにすべきです。 

 マスコミやインターネットには「かみあわせが悪いと全身に色々な問題が出る」といった記事がいっぱいです。特にインターネットでは「かみ合わせが悪いと大変な問題が起こる」といった恐怖を与えるような内容まであります。本当でしょうか。よく考えてみるとおかしいと思われるはずです。

 昔、歯の悪い人が世間にあふれていた時代があります。その時代に口が開きにくいとか痛いとかいう人がたくさんいたなら、少しは記録が残っていてもよさそうですが、そんな記録はありません。

 また今の時代でも、世界には歯科医がまだ十分にはいない国が多数あります。むし歯を治療できずそのままになっていたり、歯を抜いたけれど入れ歯を入れられないままになっていたりする人がいっぱいおいでです。そのような国で顎関節症の人が多いかというと、そんな報告もありません。

 ですから「かみあわせの悪さ」だけが顎関節症の原因ではないのです。最近の調査によって「かみあわせの悪さ」は、顎関節症を引き起こすうえでそれほど影響がないことも分かってきました。それでは、顎関節症の原因はどう考えたらいいのでしょうか。

 現在、世界的に認められているのは、顎関節症の原因が一つではなく多くの要因が関係するという考えで、多因子病因説といいます。かみあわせの悪さもそのような多因子のうちの一つではありますが、要因はほかにも多数ありますから、ほかの要因の方が大きいばあいにはかみ合わせだけ良くしても症状が改善しない人が出てくるわけです。

 ただ、そういった多因子の中で、わたくしたちの研究で重大な要因を見出しました。それはわたくしたちが歯列接触癖(Tooth Contacting Habit(TCH))と名づけた癖です。この癖があると顎関節症を引き起こす危険性が高まるのです。痛みをもって来院された顎関節症患者さんの70〜80%の方がこの癖を持っていることが分かっています。また、この癖を直すことで顎関節症が早期に改善することも明かになりました。」

 現在では、本会の活動により、全国的に多くの歯科医師がTCHコントロール(是正)による顎関節症治療が出来るようになっています。この治療法では、マウスピースを使用しません。

 マウスピースを使用すると、大きなものが口の中に入っているので、どうしてもマウスピースに歯を当ててしまい、マウスピースを介してTCHを行っていることになります。多くの場合、この治療法で症状が改善しても、顎関節に痛みが出ない範囲の開口量で生活していることになります。マウスピース治療を受けられた患者さんは、試しに、両手を使って今まで以上に開口させてみてください。この時、歯周病の前歯や差し歯に無理な力を加えると歯がグラグラになることがありますから注意してください。開口させた時に、顎関節に痛みが出るようであれば、「隠れ顎関節症」の状態で、、顎関節症が改善しているわけではありませんから、治療が必要となります。

 かつては難病と言われた顎関節症が、ここまでコントロール可能になった意義はとても多きのではないでしょうか。この治療法で導入されたTCHコントロールは、同時に、虫歯・歯周病の予防・進行防止に繋がるのですから、顎関節症で困っていない人でも導入すべきです。

 

 顎関節症とは、口が大きく開けられない、口を開けようとしたり、硬い食品をかもうとすると痛むといった症状が出ることで生活、特に食生活が困難になります。患者さんによっては頭痛や肩こりが強まる方もおられます。軽い症状まで含めるなら一生涯のうちで2人に1人は経験するとも言われています。口を開けたときに、顎関節から音が出るのも顎関節症ですが、この症状だけで、口が痛むことなく大きく明けられるようでしたら、治療の対象とはなりません。

 

 

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この会は、木野孔司准教授をリーダーとした東京医科歯科大学の顎関節治療部で研究・研修した歯科医師有志と齋藤博(サイトウ歯科)によって、TCHを社会に広める目的で、2010年に設立されました。過去6年の社会活動で、TCHが社会的に認知されるようになりました。木野先生が東京医科歯科大学を定年退職されたため、事務局の齋藤博(サイトウ歯科)が、この会を引き継ぎ、TCHを社会に広める活動を展開してゆきます。