顎関節症治療

 

 顎関節症とは、口が大きく開けられない、口を開けようとしたり、硬い食品をかもうとすると痛む、といった症状が出ることで生活、特に食生活が困難になります。患者さんによっては頭痛や肩こりが強まる方もおられます。軽い症状まで含めるなら一生涯のうちで2人に1人は経験するとも言われています。

 木野先生の意見を紹介しておきます。

 「東京医科歯科大学の顎関節治療部には、他で治療を受けたのによくならないという訴えをもった患者さんが多数おいでになります。 顎関節症の痛みや口が開かないという訴えをもって歯科を受診したところ、かみあわせの悪さが原因だと言われ、歯列矯正や多くの歯のかぶせものによる治療を受けたけれどよくならなかった、という経験をお話しになります。 そのような患者さんの多くが、この顎関節治療部で開発した治療方法を採用すると短期間で症状が改善します。顎関節症を改善するのに歯並びをきれいにする歯列矯正や、かぶせものでかみ合わせをあたらしく作り直す必要はありません。自分で行うトレーニングで痛みはなくなり、口も十分に開けられるようになります。

 歯を削ったり歯列矯正を行っても良くならなかった場合、元に戻すことはできません。元のかみ合わせを変えるということは非常に危険な治療なのです。世界的にもそのようにかみ合わせを変える治療は行ってはいけないと宣言されているのです。かみ合わせを治したいなら、それは顎関節症の症状がなくなってからにすべきです。 

 マスコミやインターネットには「かみあわせが悪いと全身に色々な問題が出る」といった記事がいっぱいです。特にインターネットでは「かみ合わせが悪いと大変な問題が起こる」といった恐怖を与えるような内容まであります。本当でしょうか。よく考えてみるとおかしいと思われるはずです。

 昔、歯の悪い人が世間にあふれていた時代があります。その時代に口が開きにくいとか痛いとかいう人がたくさんいたなら、少しは記録が残っていてもよさそうですが、そんな記録はありません。

 また今の時代でも、世界には歯科医がまだ十分にはいない国が多数あります。むし歯を治療できずそのままになっていたり、歯を抜いたけれど入れ歯を入れられないままになっていたりする人がいっぱいおいでです。そのような国で顎関節症の人が多いかというと、そんな報告もありません。

 ですから「かみあわせの悪さ」だけが顎関節症の原因ではないのです。最近の調査によって「かみあわせの悪さ」は、顎関節症を引き起こすうえでそれほど影響がないことも分かってきました。それでは、顎関節症の原因はどう考えたらいいのでしょうか。

 現在、世界的に認められているのは、顎関節症の原因が一つではなく多くの要因が関係するという考えで、多因子病因説といいます。かみあわせの悪さもそのような多因子のうちの一つではありますが、要因はほかにも多数ありますから、ほかの要因の方が大きいばあいにはかみ合わせだけ良くしても症状が改善しない人が出てくるわけです。

 ただ、そういった多因子の中で、わたくしたちの研究で重大な要因を見出しました。それはわたくしたちが歯列接触癖(Tooth Contacting Habit(TCH))と名づけた癖です。この癖があると顎関節症を引き起こす危険性が高まるのです。痛みをもって来院された顎関節症患者さんの70〜80%の方がこの癖を持っていることが分かっています。また、この癖を直すことで顎関節症が早期に改善することも明かになりました。

 顎関節症は適切なトレーニングを行えば、高額な歯列矯正やかぶせもの治療を受けなくとも良くなります。トレーニングには2つあります。1つは自分で知らずに行っている癖(主にTCH)の修正トレーニング、もう1つは関節や筋肉の状態を直接的に良くするためのリハビリトレーニングです。トレーニングの方法を知る必要はありますが、この方法を知ると必ず症状は改善します。」

 次に、齋藤博先生の意見を紹介します。

 「2003〜4年に掛けて、東京医科歯科大学病院・顎関節治療部で木野先生の治療を見学させていただく機会がありました。難病と言われていた顎関節症患者を、開口測定器以外の特別な器具を使うこともなく、TCH是正指導だけで治してしまう現実を目の当たりにしたときに、狐に包まれたような思いがありました。当時は、顎関節症治療をマウスピースを使用して治すことが当然と信じられていましたが、木野先生はマウスピースさえ使ってはダメだという意見でしたから尚更です。

 現在では、マウスピースを使用する事で、顎関節症が一時的によくなっても、顎関節症はよくならないと考えています。この状態を、「かくれ顎関節症」と言います。診断法は簡単です。左右の手を使って、口を無理に開口させた時に、顎関節部分に痛みを感じるようならば、「かくれ顎関節症」です。」

 TCHコントロールだけで顎関節症症状を改善できる事実を社会に広めるために、木野先生(グループ)と齋藤先生は、本会を作り、広報活動を開始しました。それは、2010年のことでした。(広報:渡邉)

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この会は、木野孔司准教授をリーダーとした東京医科歯科大学の顎関節治療部で研究・研修した歯科医師有志と齋藤博(サイトウ歯科)によって、TCHを社会に広める目的で、2010年に設立されました。過去6年の社会活動で、TCHが社会的に認知されるようになりました。木野先生が東京医科歯科大学を定年退職されたため、事務局の齋藤博(サイトウ歯科)が、この会を引き継ぎ、TCHを社会に広める活動を展開してゆきます。